問い合わせ対応にAIを使うとき、精度を左右するのはモデルの性能より「渡す資料の状態」です。本記事では、HubSpotが公開しているカスタマーサポート関連の講座と解説を参考に、回答の土台となるFAQと社内資料を整える手順を5つに整理します。

AIが答えに詰まる原因は、資料側にあることが多い
同じ質問に毎回違う答えが返るとき、原因は大きく3つに分かれます。答えが複数の資料に分かれている、古い版が残っている、表現が部署ごとに違う、のいずれかです。どれも、資料の整備で改善できます。
手順1:実際の質問を集める
過去3か月の問い合わせを、回答者ではなく「お客様の言葉のまま」集めます。社内用語に置き換えると、実際に使われる言い回しが分からなくなります。100件程度あれば、頻出の質問はほぼ網羅できます。
手順2:重複をまとめて質問の単位をつくる
表現は違っても意味が同じ質問をまとめ、1つの質問として扱います。このとき、代表的な言い回しを1つ決め、残りは「よくある言い方」として記録しておきます。AIが言い回しの違いで迷わなくなります。
手順3:回答の型を決めて書き直す
回答は「結論→理由や条件→次の行動」の順で書きます。長い前置きや、複数の話題を1つに混ぜた回答は、AIが正しい部分だけを取り出しにくくなります。1つの質問に1つの結論を対応させます。
手順4:更新の担当と時期を決める
FAQは必ず古くなります。項目ごとに更新の担当を決め、見直しの時期を設定します。料金や仕様が変更されたときに、どの項目を直すかを一覧にしておくと、更新漏れを防げます。
手順5:実際の質問で試す
整理した資料を使って、用意した質問を投げてみます。答えられない質問、答えが曖昧な質問を洗い出し、資料を補います。この往復を2〜3回行うと、実務で使える水準に近づきます。整備の考え方はRAGのページでも解説しています。
整備の前後で変わること
| 項目 | 整備前 | 整備後 |
|---|---|---|
| 質問の粒度 | 表現ごとにばらばら | 意味の単位で統一 |
| 回答の所在 | 複数資料に分散 | 1つの項目に集約 |
| 更新 | 担当が不明 | 担当と時期を明記 |
| AIの回答 | ばらつく | 根拠が一致する |
問い合わせ対応を仕組みとして運用する手順は、返信下書きの仕組み化で解説しています。受付を一元管理するZendeskやIntercomのような道具と組み合わせると、整備した資料をそのまま回答の材料に使えます。回答が事実と食い違う状態はハルシネーションとして知られ、資料の鮮度が品質を左右します。
よくある質問(FAQ)
Q. どこから整備すればよいですか?
A. 件数の多い質問から順に整備します。全体を一斉に直そうとすると時間がかかり、効果が出る前に止まりがちです。上位20件を整えるだけでも、体感は大きく変わります。
Q. お客様の言葉ではなく社内用語で整理してもよいですか?
A. 質問の見出しは、お客様が使う言葉に合わせるのが基本です。社内用語を残したい場合は、別名として記録し、検索や言い換えの材料にします。見出しを社内用語にすると、実際の問い合わせと結び付かなくなります。
Q. 整備にかかる時間の目安はありますか?
A. 対象の範囲によって大きく変わります。最初は1つの製品や1つの手続きに絞り、上限を決めてから着手すると、途中で止まりにくくなります。
編集部の見解
AIサポートの品質は、モデルを替えるより資料を整えるほうが早く上がります。当編集部では、実際の質問を「お客様の言葉のまま」集める作業から始めることをすすめています。この一手間を省くと、整備した資料が現場の言葉とずれてしまいます。整備は一度で終わらせず、更新の担当と時期を決めて運用に組み込むことが、結果的にいちばんの近道です。
my-best.ai 編集部
出典:HubSpot「AI agents for customer support」/HubSpot Academy(Service 関連講座)(要約して紹介しています)
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