長い作業を任せると、途中から精度が落ちる。これはモデルの限界というより、渡している情報が濁っていることが原因です。同じ指示が重複し、古い前提が残り、関係ない履歴が混ざる。渡す情報を整理するだけで、同じモデルのまま結果が変わることがあります。

文脈が濁ると、なぜ精度が落ちるのか
モデルは渡された情報のすべてを材料にします。矛盾する2つの前提があれば、どちらかを選ぶ判断が入り、その判断が毎回変わります。古い情報が残っていれば、それも材料になります。情報が多いほど良い、という単純な話にはなりません。
公開講座では、この状態を文脈の劣化として扱い、窓を広げても解決しないと説明しています。原因は量ではなく、内容の重複と矛盾です。
手順1:実際に渡している情報を全部書き出す
指示、参照文書、会話履歴、ツールの戻り値。エージェントに渡しているものを、すべて列挙します。ここで「たぶんこれも渡っている」と曖昧にすると、後の整理が効きません。一度、実際のリクエストの中身を出力して確認してください。
手順2:3種類の濁りを探す
| 濁り | 見つけ方 | 典型例 |
|---|---|---|
| 重複 | 同じ指示が2回以上書かれていないか | 冒頭と末尾に同じ禁止事項 |
| 矛盾 | 条件が食い違っていないか | 「簡潔に」と「詳細に」が併記 |
| 古さ | 更新日が古い文書が混ざっていないか | 改定前の規程が参照されている |
3つのうち、影響が大きいのは矛盾です。重複は費用が増えるだけですが、矛盾は出力を不安定にします。
手順3:削る前に、消してよいかを決める
削ると精度が落ちる情報もあります。判断に必要な条件、禁止事項、出力の形式は残します。削ってよいのは、装飾的な説明、過去の雑談、使わない列のデータです。迷ったら残し、まず重複から削ってください。
手順4:長い履歴は要約に置き換える
会話が長くなったら、直近の数往復だけを残し、それ以前は要約にします。要約には、決まったこと、却下された案、未解決の論点の3つを残します。この3つが抜けると、同じ議論をやり直します。
要約の作り方は、コンテキストエンジニアリングの項目で扱っている整理の考え方が参考になります。
手順5:大きな資料は文脈の外に置く
長い文書をそのまま渡すと、窓を圧迫します。全文を抱えず、必要な部分だけをそのつど取りに行く形にします。検索して該当箇所を引く、ファイル名だけを持って必要なら開く。この形なら、資料が増えても文脈の量は変わりません。
手順6:変更の前後で同じ課題を解かせる
整理したら、同じ課題を同じ入力で解かせて比べます。見るのは、出力の長さ、指示の遵守、事実の取り違えの3つです。改善したかを判断できない変更は、元に戻せるようにしておいてください。
比較の記録が残っていれば、次に別の変更を入れるときの基準になります。
よくあるつまずき
指示を短くすれば良いと思い込むと、必要な条件まで削れます。短さは目的ではありません。同じ意味の記述を1か所にまとめるだけで、分量は減り、条件は残ります。
また、要約を別のモデルに任せると、要約の段階で事実が変わることがあります。要約は人も読める形で残し、定期的に原本と突き合わせてください。
FAQ
Q. 窓が大きいモデルなら整理は不要ですか?
A. 不要にはなりません。窓が大きくても、矛盾した情報が入れば出力は不安定になります。量の問題と質の問題は別です。
Q. どこから手を付けますか?
A. 重複の削除からです。リスクがなく、効果が見えやすい。次に古い文書の差し替え、最後に要約の導入という順番が安全です。
出典
出典:DeepLearning.AI「Context Engineering」(2026年10月20日更新)
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編集部の見解
精度が落ちたとき、モデルを替える前に文脈を見る。これだけで解決する例は少なくありません。ただし、整理の効果を測るには、同じ課題を同じ条件で解かせる手間が要ります。その手間を省くと、良くなった気がするだけの変更が積み上がります。変更は1つずつ、記録とセットで、という原則を守る価値は大きいです。
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