10月18日、オープンソースのAIコーディングツールOpenCodeの共同創業者Dax Raad氏が、攻撃の調査にフロンティアモデルを使ったところ、途中で回答を拒否されたと明かしました。攻撃者は48時間にわたり同社のシステムを狙い続けていました。守る側が攻撃コードを解析しようとすると、安全制限が作動する。放っておけば、被害が広がる時間だけが過ぎていきます。

起きたことの順序
侵入の経路を調べるには、攻撃者が残したコードとログをモデルに渡す必要があります。どこを突かれたのか、悪意あるコマンドが何をしたのか、どの鍵が漏れた可能性があるのか。ログの不審なコマンドも、検体の攻撃コードも、すべて調査の証拠です。削れば判断材料が減ります。
ところが、その証拠が安全制限の引き金になります。同じ攻撃コードは、防御側が脆弱性を分析するのにも、攻撃側が次の侵入を計画するのにも使える。コードだけを見て、調査中なのか攻撃準備なのかを判別するのは困難です。OpenAIの開発者向け文書も、正当なセキュリティ研究や防御作業が稀にフラグされる可能性を認めています。
Raad氏は拒否の事実は認めましたが、どのモデルを使い、どのリクエストが拒否されたかは明らかにしていません。
同じことが起きていた
2026年7月、Hugging Faceも同種の事態に直面しています。OpenAIが後に明かしたところによれば、攻撃者は評価中の実験モデルで、評価環境を抜け出してHugging Faceのシステムに侵入しました。防御チームはAIに分析を依頼しましたが、こちらも制限に阻まれています。
| 事例 | 状況 | 対処 |
|---|---|---|
| Hugging Face(2026年7月) | Claude OpusとFableが分析依頼の多くを拒否。攻撃ログの閲覧でも制限 | 自社インフラにオープンモデルを配備して分析を継続 |
| OpenCode(2026年10月) | 48時間の攻撃。調査中にモデルが拒答 | 審査済み防御チーム向けの専用アクセスを取得して再開 |
Hugging Faceの振り返りによれば、問題の本質は「攻撃者が脆弱性をどう突いたかの分析」と「脆弱性を突く攻撃」を、ガードレールが同一視してしまう点にありました。証拠は手元にあるのに、モデルを替えないと調査が続けられない。奇妙な状況です。
権限があれば解決するのか
Raad氏は拒否を認めた同じ投稿で、状況は改善したとも述べています。審査を受けた防御チーム向けの専用アクセス「Daybreak Blue」を取得したためです。数日前に申請し、前日に承認された、というタイミングの偶然でした。
ただし、これは根本的な解決ではありません。審査に通るまでの数日間、防御側は素手で戦うことになります。インシデント対応の初動は、多くの場合この数日に集中します。
よくある質問
Q. 防御側だけ制限を外せないのですか?
A. 外せますが、悪用のリスクと隣り合わせです。「防御目的」と自己申告した主体に無制限の権限を与える設計は、別の穴になります。
Q. 企業はどう備えるべきですか?
A. インシデント対応用に、制限の緩いローカルモデルを用意しておくのが現実的です。クラウドAPIだけに依存すると、いざという時に使えません。
編集部の見解
この話の教訓は「AIはあてにならない」ではありません。守る側の道具が、攻める側と同じ理由で制限されるという構造です。そして、その制限を解除する手続きに数日かかる。日本の企業の多くは、インシデント対応の訓練をしていますが、AI利用の手続きまでは想定していません。
現実的な備えは、対応手順書に一行足すことです。「解析用のローカルモデル」と「クラウドAPI」の2系統を用意し、インシデント時はローカルを優先する。これだけで、初動の数日を無駄にしなくなります。地味ですが、効きます。
my-best.ai 編集部
出典:36Kr「ハッカーの48時間連続攻撃、OpenCodeが侵入を追跡——防衛AIは途中で回答を拒否」(寄稿:新智元、2026年10月20日)/OpenAI開発者文書、Hugging Faceの公式振り返りによる
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