問い合わせBotが使いにくいと言われる理由の1つが、文脈の喪失です。直前の質問を踏まえずに答えられると、利用者は同じ説明を繰り返します。DeepLearning.AI の LangChain 講座は、記憶(Memory)を独立した回として扱っています。

講座の構成を、作る順番として読む
「LangChain for LLM Application Development」は、Harrison Chase 氏と Andrew Ng 氏の講座で、8本の動画、合計1時間48分の構成です。回の並びは、モデル・プロンプト・パーサー、記憶、連鎖(Chains)、文書への質問、評価、エージェントとなっています。この並びは、そのまま作る順番として使えます。記憶は2番目、つまり土台の次に来ます。
手順1:モデルを1つ決め、呼び出しを1か所にまとめる
最初に決めるのは、使うモデルと呼び出し方です。講座の第1回は、モデルの呼び出し、プロンプトの渡し方、返答の解釈(パーサー)を扱います。呼び出しを1か所の関数にまとめておくと、後でモデルを替えるときに1か所だけ直せます。この段階では、記憶も連鎖も入れません。
手順2:会話の保存先を決める
記憶は、会話をどこかに保存し、次の呼び出しで読み出す仕組みです。保存先は、メモリ上か、外部の保存場所かで選びます。開発中はメモリ上で十分ですが、利用者が複数いる本番では、会話ごとに分けて保存する必要があります。誰の会話かを取り違えると、他人の質問に答えてしまいます。
手順3:渡す履歴の長さに上限を置く
会話を全部渡すと、入力が長くなり、費用も増えます。講座が記憶の回で「限られたコンテキストの管理」に触れているとおり、渡す履歴には上限が必要です。直近の数往復だけを渡す、要約して渡す、のどちらかを選びます。要約を挟むと長い会話でも文脈を保てますが、要約の誤りが入る余地も生まれます。
手順4:連鎖で、記憶とモデルをつなぐ
講座の連鎖(Chains)の回は、複数の処理を順につなぐ考え方を扱います。記憶から履歴を読み、プロンプトに差し込み、モデルを呼び、返答を保存する、という流れを1本にします。ここをつなぐと、呼び出し側のコードから記憶の扱いが消え、見通しが良くなります。
手順5:覚えていてほしくない情報を落とす
会話には、氏名、連絡先、契約の内容が混ざります。保存する前に落とす項目を決めてください。落とす処理を後から足すのは難しく、最初に入れたほうが確実です。個人情報の扱いはゼロデータ保持のような設定とも関係するため、利用するサービスの公式情報を確認します。
手順6:評価の回の考え方で、記憶の効き目を測る
講座には評価の回があります。記憶が効いているかは、同じ相談を2ターン続けたときに、2ターン目で説明を省けるかで測れます。10組の会話を用意し、記憶ありとなしで比べると差が出ます。数字で残しておくと、あとで履歴の長さを変えたときの比較ができます。
FAQ
Q. プログラミングの経験がなくても作れますか?
A. 講座は初級向けとされていますが、Python の基本があると理解が早いと明記されています。コードを書かずに試したい場合は、記憶を持つ機能が組み込まれた既存のサービスを選ぶほうが早いです。
Q. 記憶を持たせると、誤った前提も覚えてしまいます。
A. 覚えます。利用者が訂正したら履歴側も直す、という処理を入れてください。訂正を拾う指示を1行足すだけでも変わります。
出典
出典:DeepLearning.AI「LangChain for LLM Application Development」(Harrison Chase、Andrew Ng 講師、2025年10月14日更新、2026年10月23日参照)
あわせて使いたいツール
本記事の手順を実際に回すときに、候補になるツールを挙げます。いずれも無料から試せる範囲があり、料金や機能は各サービスの公式情報で確認してください。
関連ガイド
同じ時期に公開した実務ガイドと、用語の定義ページです。手順の前提が分からない場合は、用語ページから確認してください。コピーして使える依頼文が欲しいときは、プロンプト集も参照してください。
- 社内文書に答える仕組みをLangChainで組む:評価まで含めた手順
- リード管理の段階を決める:HubSpotの分類と採点の作り方
- 大規模言語モデル(LLM)(用語辞典)
- ガイド一覧(実務手順をまとめて読む)
- AIツール一覧(道具から探す)
- 比較記事一覧(料金と機能で比べる)
- レビュー一覧(使った記録を読む)
編集部の見解
記憶を入れると、Botは急に賢く感じます。ただ、覚えている内容が古いままだと、丁寧に間違え続けます。記憶は便利な機能であると同時に、訂正の仕組みをセットで持たないと危ない機能だと思います。
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