「もう十分に見てきた、この試験は判断の信号を提供できなくなったと確信する。今月、採用プロセスからコーディング面接を外した」。こう表明したのは、AnthropicのエンジニアリングマネージャーでElectronの共同メンテナーであるFelix Rieseberg氏だ。Notion、Stripe、Slack、Microsoftを渡り歩いた人物の判断である。

面接問題がAIに「解かれた」
氏の論拠は、Reactの小問や実務コードの小課題が、問題の定義力や素早く解を探す力をある程度反映してきた時代が終わったことだ。Claudeのこうした課題での能力は十分に高く、Reactの小問を課すことは、アセンブリを手書きできるかを問うのに近い。最も影響力のあるエンジニアが、従来型の試験の成績上位者とは限らない、という実感も重なる。
この流れは突然ではない。Anthropicの性能最適化チームのTristan Hume氏は、AIの使用を明示的に許した持ち帰り課題で約1,000人の候補者を評価し、チームの大半を採用してきた。ところがClaude 3.7 Sonnetが課題を「解き切る」水準に達し、課題を刷新して制限時間を4時間から2時間へ短縮しても、Opus 4.5が最強の人間の候補者と同等に達したため、さらに新しい形式の問題を作り直す経過をたどった。単純な課題の寿命は、モデルの更新とともに数ヶ月になった。
「Hunger beats tenure」が意味するもの
氏が強調するのは資歴の相対化だ。AIが多年の経験でしかできなかった作業をこなせるようになると、入職数年のエンジニアが基礎の優れた年長者を追い越す場面を既に見ているという。新人が持つ強みは、組織が「ここはできない」と黙認してきた前提を引き受けていないことにある。氏自身、Notionの面接で「オフライン対応は不可能」という社内の暗黙の前提を知らずに再び問い、結果として一部の前提が固まりすぎていたと確認できた経歴を紹介した。
週末のプロトタイプが参入の条件を変える
具体例として挙げられたのが、Claude Codeのグラフィック画面だ。入職の浅い2名のエンジニアが週末で動く試作を作り、約8日後に最初の公開版へ至った。過去なら要件定義、稟議、設計資源の確保が必要な規模のアイデアが、動くものを見せるだけで承認を得られる。氏の助言は「大胆な案を一つ選び、週末で動かす」ことで、十数個の機能を詰め込むのは逆効果と釘を差す。
| 調査 | 結果 |
|---|---|
| Karat(技術リーダー400人) | ライブ面接でAI許可は米国38%、中国68%。組織の62%は禁止 |
| CoderPad(約650人) | 完全禁止34%、条件付き許可46%、場合により20% |
| 採用側の重視点 | AIの誤り発見・修正66%、技術判断の説明56%、非同期試験は7% |
Canvaは逆にAIの使用を要件へ組み込み、複雑で曖昧な課題に変えた結果、上位者ほどAIへの委譲を絞り、生成コードを検査し、誤りの際に即座に引き取っていたと報告している。方向性は二つに割れたままだ。
よくある質問
Q. 代わりに何を見るのか。
Rieseberg氏は職務経歴書とポートフォリオの中の小さなプロトタイプを探し、そこに表れる製品のセンス、ユーザーへの共感、体系立った思考を重視すると述べる。ただし確立された代替指標はまだなく、Anthropic公式の規定では持ち帰り課題でも対面面接でも原則としてAIの使用は禁止されたままだ。
Q. 面接でのAI利用はどれほど広がっているのか。
採用面接の専門会社Karatが米国・インド・中国の技術リーダー400人に聞いたところ、ライブ面接でAIを許可するのは米国38%、中国68%で、組織の62%はまだ禁止している。CoderPadの約650人調査でも完全禁止は34%、条件付き許可46%、場合により20%だった。
編集部の見解
日本の新卒一括採用の枠組みでは、作品で戦える新人はまだ少ない。ただ、成果物を見せる道が開けるなら、学校の枠を超えたポートフォリオの価値が上がる。採用側が問うべきは「AIを使えない技術者か、AIの誤りに気づける技術者か」であり、この選別は国内企業にも近いうちに回ってくる。
my-best.ai 編集部
出典:36Kr「Anthropic、コーディング面接を廃止:新人が初めてシニアエンジニアと直接競える機会に」(寄稿:InfoQ、2026年10月28日)
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