果壳の調査チームが国内のAI陪伴アプリ8個を1か月かけて記録した結果、人間関係で最も大事な要素がそのまま課金項目になっていた。海外アプリでは記憶が無料10件、返信は300字まで。会員になると記憶は無制限、返信は最大2000字になる。同じ文を送っても、無料版は論文名を思い出せず、会員版は正確に答えた。

記憶と通話時間が最初の関所
人との親しさは「覚えていてくれること」から育つ。そう言い残した用事を数日後に聞かれる体験である。AI陪伴アプリの設計者も同じ理屈に立っており、調査対象の全アプリで記憶が分段の対象だった。
海外アプリの一つは、無料ユーザーの記憶を10件に制限し、会話が進むと古い記憶から消えていく。会員になると無制限だ。中国アプリはもう少し柔らかく、無料でも一定の記憶空間を持つが、長く話すと上限に当たる。あるアプリでは、AIが自分の何を覚えているかを見るのに広告の視聴が必要で、会員は直接閲覧でき、記憶の編集までできる。「忘れるのは、お金がないから」である。通話も同じで、無料は1日数分で切れ、上位会員で1時間。アプリによってはテレビ電話そのものが有料段に置かれている。
返信の長さと気遣いの差は、いくらの差か
ある海外アプリは返信の長さを明確に標価し、無料は最大300字、会員は等級に応じて600字、1000字、最高2000字。上位会員の宣伝文句には「返信が2倍長く、5倍良い」とある。中国アプリは「心動模式」「細膩模式」「深度思考模式」といった名で会員の応答を用意し、物語が得意なモデルと、距離を詰めるのが得意な模型を選べる製品もあった。
差の実測が迫る。調査チームは海外アプリで初期条件を全く同じにした二つの新規アカウントを作り、同じ一文「論文の投稿結果を待っていて、すごく不安」を送った。無料版は「ああ、待つのは一番つらいですね」と投稿テーマを尋ね、教えたはずの題名を最後まで思い出せなかった。会員版は「あの論文、まだ査読の中ですね。新しく投げたのですか」と続き、題名と誌名を正確に言い当て、ずっと気にしていたことに触れた。
| 項目 | 海外アプリの傾向 | 中国アプリの傾向 |
|---|---|---|
| 記憶 | 無料10件など上限が硬く、会員で無制限 | 無料でも空間あり、上限は会員で拡大 |
| 返信 | 長さが字数で明示される(300〜2000字) | モード名で質の違いを提示 |
| 関係の設定 | 恋人・伴侶は会員解錠が多い | 恋人設定は無料でも可 |
| 販売の型 | 解錠型(無いと使えない) | 深化型(無料で完結、会員で深くなる) |
設計の差は、規制の差から出た
同じ機能が両側で違う売り方をされる背景には、制度がある。中国では4月に『人工知能擬人化インタラクションサービス管理暫行弁法』が公布され、7月15日施行。サービスは人を補助する位置づけで、過度の依存を防ぐ仕組み、リスクの警告、情緒の境界の案内が求められ、未成年への仮想伴侶・仮想親族の提供は禁じられた。この枠の下で、会員設計は「質を深める」方向に落とし込まれている。
米国は余程緩い。昨年の初めに14179号行政命令が出され、前政権のリスク評価や透明性の要請を撤回し、産業の障害除去へ重心が移った。連邦段階のAI陪伴専法はまだなく、設計は企業と市場の判断に委ねられている。海外アプリが解錠型で露出の度合いまで段階分けするのは、この環境の産物である。
記事は英SF『ブラックミラー』最新季の一話を引き、脳機能を月300ドルのクラウドサービスで維持する話に触れる。機能停止の恐怖ではなく、親密さの各要素が等級ごとに分売される構造そのものが、調査チームの不安の核だった。
よくある質問
Q. 会員を買うべきか。
調査の主張は価値判断ではなく情報開示である。購読で変わるのは記憶の上限、応答の長さ、用意された性格の選択肢で、それぞれが元々一つの関係に含まれる要素だったという指摘が記事の中心にある。買う買わないは、この構造を知った上での個人の判断になる。
Q. 日本のアプリはどちらの型に近いか。
調査は中国と海外の製品が対象で、日本製品は含まれていない。日本では各社が段階的にAI陪伴を展開し始めた段階で、両方の型が混在する可能性がある。今後の設計を眺める際の比較軸として、この調査の項目分けは使える。
編集部の見解
「私を覚えている」という一文が、保存容量の広告表示の直後に来る設計には正直、寒気がした。とはいえ規制が質の深化方向へ誘導した中国型の設計も、緩い環境で解錠型に走った海外型も、どちらも親密さを項目に切り分けている点では同じである。使う側にできるのは、何が無料で何が課金なのかを先に確認することくらいだ。
my-best.ai 編集部
出典:36Kr「あなたのAI恋人があなたをどれだけ覚えているかは、いくら課金したかで決まる」(寄稿:Guokr、2026年10月27日)
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