ダブルイレブンの準備に、各ECプラットフォームはAI機能の投入を並べた。阿里は10月14日に千問(Qwen)のEC版を邀請制テストへ移し、京東は数十のAIツールを出店者へ開放、抖音は豆包経由の取引に4〜13%の技術サービス費を設定した。ただし出店者の評判はまちまちで、AI客服を停止して人手へ戻した店舗も出ている。

プラットフォームは消費者と出店者の両端にAIを置いた
阿里側の動きは二段階だ。5月11日に千問と淘宝を全面連結し、商品の選定、比較、購入を対話で進められるようにした。10月14日には千問(Qwen)のEC版が邀請制で始まり、横断的な経営看板、傾向の把握、販促素材の量産、広告出稿の最適化を担う。既に生意参謀、有讃、千牛へ接続済みで、阿里的副総裁の陳宇森氏は「淘天の出店者に限らず、全業種に開かれた横断型AI Agent基盤である」との趣旨を述べている。
京東は7月公開の京麦AI経営中心で数十のAIツールを出店者へ開いた。デジタルヒューマン配信も進めており、JoyAIアプリは実時間で映像を見ながら買い物ができる初のAIデジタルヒューマンを備え、JoyAvatarが終日配信を続ける。消費者向けアシスタント「東東」も買い物の判断材料を出すようになった。
抖音は、豆包の会話に抖音電商や地元生活サービスの商品推薦を組み込みつつ、取引にはコストを設定した。豆包経由の取引は「特定渠道補充技術服務費」の対象で、率は最大5.2%。8月10日からは宿泊、運動、家具、教育、出産関連の出店者が豆包経由の注文に4〜13%を上乗せで払う。店舗管理画面には「豆包運営」専用区があり、高頻度の質問話題から抽出した商機ワードを提示し、「早めの商品登録が欠貨の利益を取りやすい」と案内している。大促期間中は飛鸽のAI客服も無料開放された。
無料でも使わない、という出店者の判断
魅力があるのは事実だ。専任デザイナーがいなければ商品図をAIで作れるし、商品数が多ければ素材の量産が効く。ただ、説明の正確さ、売り方の適合、出稿案の当てはまりは最終的に人が見る必要がある。
ある出店者は、消費者が「礼盒に添え状を付けられるか」と尋ねた場面で、京東のAI客服が一律「可能」と答えたのを見て機能を切った。実際にはプラットフォーム倉庫から出す注文は添え状不可、自社倉庫なら可で、答えは配送経路ごとに分かれる。「礼儀は足りているが、能力が足りない」という同氏の評は、無料でも使わない理由を端的に表している。
| プラットフォーム | 主なAI投入 | 出店者側の負担や制約 |
|---|---|---|
| 阿里(淘宝・千問) | 千問購物助手、千問(Qwen)EC版(経営看板・素材生成) | 生意参謀等の既存AIで概ね賄える、細部は自社調整が必要 |
| 京東 | 京麦AI経営中心、デジタルヒューマン配信、東東 | ツール数は多いが、店ごとの運用に組み込む力が要る |
| 抖音 | 豆包運営専用区、商機ワード、飛鸽AI客服(期間無料) | 豆包経由の注文に4〜13%(上限5.2%の枠もあり)の技術サービス費 |
自前の工作流を作ると、壁はAPIに出る
標準品に満足しない出店者は、データ分析、商品管理、素材制作を自前でつなぐ工作流を組み始めた。ただ、ここで立ちはだかるのが開放の範囲だ。APIは全員に開かれておらず、第三者ERPを使っても注文照会は阿里奇門、京東虎符、拼多多方舟といった技術体系を通る。淘宝開発プラットフォームの申請には天猫店舗の口座、製品説明書、自社ソフトウェアの著作権証書が付き、専任の審査を経る。鍵になるインターフェースが繋がらないままでは、真の自動化には届かない。
結果として分かれたのは、有料ツールを続ける層と、規約の縁を狙って取得する層である。後者は不正検知に触れて停止させられるリスクを常に負う。プラットフォームがAIを進める方向はもう決まっており、問われているのは開放の幅のほうだ。
よくある質問
Q. AI客服は無料でも使わないほうが良いのか。
用途次第である。あいさつ、営業時間、一般的な案内のような範囲なら効く。ただし配送経路や在庫の区分で答えが変わる質問は誤答の温床になるので、人が見る前提の切り分けを先に決めるべきだ。
Q. 千問(Qwen)のEC版は導入すべきか。
記事で取材された複数店舗の経験者は、既存の生意参謀系AIで日常は賄えるとして見送っていた。新規出店や複数プラットフォームの初期整備には向くが、店ごとの戦略を任せられる段階ではない。
編集部の見解
両者の温度差の正体は、プラットフォームが売りたいAIと、店舗が欲しいAIの粒度の違いだと思う。前者は全業種で回る汎用機能、後者は自店の配送区分や在庫の癖を含んだ判断である。APIと権限の開放幅が出店者の導入率を決める構図は、日本のECでもそのまま参照できる話だった。
my-best.ai 編集部
出典:36Kr「ECプラットフォームはダブルイレブンでAIを推すが、店舗側は別の勘定をしている」(寄稿:電厂、2026年10月27日)
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