出来上がった文章に、自分の目で一度戻る。人の作業では当たり前のこの一手を、AIにやらせるのが reflection(自己点検)です。DeepLearning.AI の Agentic AI コースでは、AIが自分の出力を批判して改善を繰り返すパターンとして、4つの設計パターンのひとつに挙げられています。

自己点検が効く仕事の条件
効くのは、「良し悪しの基準を言葉にできる」仕事です。文書の構成、手順の抜け、表現のぶれ。基準が言葉になるなら、点検の依頼文も作れます。逆に、好みの問題が大きい仕事や、基準が人の中にあるだけの仕事は、自己点検が形だけになりやすいので、最初の対象にしません。
手順1:点検の基準を3項目に絞る
点検させたい仕事について、基準を3項目に絞ります。例えば手順書なら「1行1動作になっている」「画面の名称が入力どおり正しい」「更新日が入っている」。基準が3つなら、点検の結果も読みやすく、改善の度合いも数えられます。
手順2:最初の出力を作らせる
通常どおり、仕事の依頼文で出力を作らせます。ここで完璧を求めないのが要点です。reflection は「作る」と「点検する」を分けることで効く仕組みなので、1回目の品質に重きを置きすぎると、点検の効果が測れません。
手順3:同じ対話内で点検させる
続けて、点検の依頼を投げます。型は次のとおりです。「先ほどの出力を、次の3つの基準で点検してください。基準ごとに『合っている/合っていない』と、該当する箇所を指摘してください。直し案は書かず、指摘だけにしてください」。
直し案を書かせるかどうかは分かれますが、最初は指摘までに絞るのが安全です。指摘と修正を同時にやらせると、都合のいい直しになりがちです。点検の枠組みを先に作る考え方は、プロンプトエンジニアリングの基本と同じで、出力の形を先に決めるほど揺れが減ります。
手順4:指摘だけを見て、人が採否を決める
点検の結果を人が読み、「直す」「直さない」を決めます。全部を直させる必要はありません。直す項目が決まったら、「指摘の1と3だけを修正してください」と範囲を指定して直させます。人の判断を挟む位置づけは、人間参加型(HITL)の考え方そのものです。
手順5:点検の効いた割合を数える
数回回したら、点検が指摘した項目のうち、人が「直すべき」と認めた割合を数えます。割合が低いなら、基準の3項目が仕事に合っていない可能性が高いので、基準を書き直します。割合が高いなら、依頼文の側に基準を先に組み込むと、点検の工程そのものを減らせる場合があります。エージェントに任せる範囲を広げる前の小さな練習として、このパターンはちょうどいい大きさです。
点検が空回りする典型
「全体として良い文章です」といった感想だけが返ってくる場合、基準の項目が曖昧です。数えられる形(行数、項目名の有無、日付の有無)に直すと、指摘が具体的になります。感想を求めているのではなく、照合を求めている、と意識するのがコツです。
FAQ
Q. 点検もAIなので、穴は残りませんか?
A. 残ります。自己点検は「基準との照合」の自動化であって、正しさの保証ではありません。事実の確認は人の工程として残してください。
Q. 何回繰り返せば十分ですか?
A. 2回までにしてください。3回以上の繰り返しは、出力が安定せず、点検の指摘が揺れ始めます。小さな基準で1回点検、1回修正で足りることが多いです。
出典
出典:DeepLearning.AI「Agentic AI」(Andrew Ng、2026年8月31日更新、2026年10月22日参照)
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関連ガイド
同じ時期に公開した実務ガイドと、用語の定義ページです。手順の前提が分からない場合は、用語ページから確認してください。コピーして使える依頼文が欲しいときは、プロンプト集も参照してください。
編集部の見解
reflection は、最近のエージェント技術の話題の中では地味な部類ですが、明日から試せる唯一のパターンだと思います。道具を増やさず、依頼文を2通用意するだけで回る。基準の3項目を決めるときに、自分の仕事の質の基準も言葉になる。その副次的な効果のほうが、実は大きいと感じています。
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