明略科技は従業員1,800人に対し、8,000体のAI社員を動かしている。内訳はAIアシスタント5,000体、AI専門家3,000体で、人とAIの比率は1対4になる。共同創業者で社長兼CFOの姜平氏は「最前線の社員はもういない。最も現場に近い人たちが管理者になり、AIを管理している」と話す。

1対4という構成比
明略科技は2006年設立で、企業向けのデータ分析を手がけてきた。AIの波に対しては4段階で製品を作り替えている。小規模モデルで企業向けチャットを組んだ第1世代、Copilotの第2世代、単体のエージェントの第3世代、そして現在のOctoである。
Octoの見た目は企業向けのメッセージツールに近い。ただし姜平氏は、土台の論理が違うと強調する。既存のツールは人間が主体で、AIは付属物だった。OctoはAIを最初から住民として置き、人間が要求を出し、結果を確認し、AI同士の協働規則を決める形を取る。
IoAという設計思想
同社はこの考え方をIoA(Internet of Agent)と呼ぶ。エージェント同士が文脈を交換して協働する網を作り、人間はその外側から指示と検査を担う。インターネットが「各人に1台のコンピュータ」ではなく「コンピュータ同士の接続」を解いた問題だという比喩を用いている。全員にAIアシスタントを1体配るだけでは最も浅い層に留まる、というのが持論だ。
この設計を支えるのがインフラである。同社はクラウドの99.9%をTencent Cloud上に置き、エージェントごとに独立した実行環境を割り当てている。長い推論を伴う業務では常駐が必要になり、サンドボックスの起動がミリ秒単位で済むかどうかが処理の安定性を左右する。
20人日が8.5時間になった例
効果が最も分かりやすいのが、中国のプール清掃ロボット企業の海外向けインフルエンサー施策である。消費者調査、候補の選定、連絡、進捗管理、配信後の振り返りという5工程を、以前は4人で1週間、およそ20人日かけていた。現在は1人が複数のAIに役割を割り振り、8.5時間で回している。
自社の財務部門でも使い方は進んだ。売上から部門、営業、注文、発注、検収、請求、入金、資金繰りまでを一気にたどれるようにし、質問への回答と動的な報告書の生成を日常業務にした。この仕組みは開発者を入れずに財務チームが自分で組んだという。
段階を飛ばさない導入順序
| 段階 | 内容 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| L1 | 社員がAIを使える状態にする | 費用の立て替えと利用規定 |
| L2 | AIを業務システムへ接続する | 権限の範囲と監査 |
| L3 | 知識を構造化して蓄積する | 更新の運用 |
| L4 | 業務単位で閉じた循環を作る | 例外処理の設計 |
| L5 | 組織全体の運転を任せる | 責任の所在 |
姜平氏はL1から順に進めるべきだと説く。最初の一歩は、社員が自腹を切らずにAIを使えるようにすることであり、月700元程度の補助で主要なサービスは賄えるという。L2では「人が見られる情報はAIも見られる」という原則を掲げるが、実際には社内のセキュリティ部門との調整に時間がかかる。
投資判断の物差しも示している。人件費とAI費用の合計に対し、成果が1.5倍以上あれば損益分岐点という考え方だ。制作費と広告費の比重が大きい電子商取引、短編動画、海外マーケティングの領域では当てはめやすい。逆に、効果が半年遅れて出る業務ではこの式は使いにくい。
よくある質問
Q. 中間管理職はどうなるのか。
情報の伝達だけを担う層は価値が薄れるという見方を示している。一方で、業務の知識と判断基準を持つ層の必要性はむしろ上がる。同社の表現を借りれば、Know-Howとセンスのない層から順に居場所がなくなる。
Q. 日本の企業にそのまま当てはまるのか。
当てはまらない部分が多い。日本では職務範囲が曖昧で、AIに何を任せたかの記録が残りにくい。まず業務を手順として書き出し、どこまでをAIに渡すかを決めるところから始めないと、1対4のような比率は意味を持たない。
編集部の見解
数字の大きさに目を奪われがちだが、実務的に有用なのは段階の切り方とROIの式である。AIを導入したものの効果が測れない、という声は日本でも多い。人件費とAI費用を同じ土俵に載せ、1.5倍を分岐点とする粗い基準は、精緻な評価設計を待たずに判断するための妥協点として使える。ただし1対4という比率自体を目標にすると、AIを動かすことだけが目的化する。
my-best.ai 編集部
出典:36Kr「従業員1,800人の会社に、なぜ8,000体のAI社員がいるのか」(寄稿:暁曦、2026年10月29日)
あわせて読みたい
- ChatGPT Pro 200ドルのCodex枠が10倍に半減、最終日の境界線
- OpenAIが月最大500ドルのAPI枠を配布、対象と落とし穴を整理
- Gemini 4 CarbonがAA指数で首位奪還、速度と幻覚率という代償
本日の36Kr AI版の記事を日本語で整理したものです。最新記事の一覧から他のニュースも読めます。
最新のAI情報をメールで受け取る
新着のAIツール比較・ランキング・ニュースを、まとめてお届けします。
ご登録後、確認メールをお送りします。配信停止はいつでも可能です。
