中国の具身智能(身体性を持つAIロボット)分野で、資金調達が急速に冷えています。IT桔子のデータでは、10月15日までの融資は19件・49.34億元。7月から9月は毎月70件を超え、8月は91件・313.23億元でした。半月分とはいえ、年換算で8月の3分の1に届きません。同時に、上場準備の鈍化が業界に伝わっています。

数字の落差
| 時期 | 件数 | 金額 |
|---|---|---|
| 2026年上半期 | 322件 | 935億元(IT桔子) |
| 8月 | 91件 | 313.23億元 |
| 10月1〜15日 | 19件 | 49.34億元 |
| 8月19日 宇樹科技 上場初日 | — | 時価総額一時4,449億元、初値は公開価格の6.29倍 |
上半期の資金配分は極端に偏っていました。上位5社が約171億元(37%)、上位20社で約330億元(7割超)。残る200社余りで約124億元を分け合い、1社あたり数千万元という計算です。3月に25億元を調達した銀河通用は、単独で200社以上の合計を上回りました。
転機は9月上旬
8月19日、宇樹科技が科創板に上場し、公開価格150.80元が初値1,100元をつけました。上場時の株価収益率は219倍、所属業種の平均は38.56倍、香港の可比企業は約19倍。初日には動倍率が800倍を超えた場面もありました。「評価額を気にするな、まず金を取れ」という空気が支配していました。
その空気が変わったのが9月上旬です。The Informationが、規制当局が非公式の「窓口指導」で一部の人形ロボット企業の上場を鈍化させたと報道。関係者の一人は「実質的に凍結されている」と述べ、別の一人は正式な禁令ではなく特定業種の減速だと説明しています。ロイターは、高い評価額と政府支援プロジェクト関連の売上が実際の市場需要を反映しているかという懸念を伝えました。
具体的な案件にも波及しています。9月21日、上海証券取引所は環動科技の科創板上場審査を終了しました。双環伝動から分社化した精密減速器メーカーで、14.08億元の調達を計画し、2回・計23問の問詢を経て自ら撤回しています。親会社の説明は「市場環境が計画当初から大きく変化した」というものです。
内部から出た告発
9月9日から10日にかけて、香港上場直後の梅卡曼德の創業者、邵天蘭氏がSNSで同業を名指しで批判しました。地方国资が建てたデータ収集センターにロボットを高値で売り、そのデータを買い戻して売上を循環させている、という主張です。評価額200億元超で香港上場を目指す企業名も挙がり、相手側は名誉毀損として警察に通報しました。真偽は別として、売上の質が問われ始めたこと自体が転機です。
よくある質問
Q. 融資は今後戻りますか。
A. 上場による出口が細ると、後期ラウンドの資金は入りにくくなります。業績と導入実績が確認できる企業に資金が集中する形に戻る可能性が高いです。
Q. 日本のロボット産業への影響は?
A. 直接の影響は限定的です。ただし、中国企業が調達しにくくなれば、価格競争の圧力は一時的に緩みます。長期では、生き残った企業の資本力が増す方向です。
編集部の見解
この記事で実務的に重要なのは、評価額の話ではなく「売上の相手が誰か」という点です。地方自治体がデータ収集用に買うロボットは、補助金で買われ、データは行政サービスに使われます。悪い話ではありませんが、市場の需要とは別物です。投資家がそこを見始めたのが今回の変化です。
日本でロボット導入を検討する立場なら、同じ目線が使えます。導入事例として紹介されている相手が、実費で買っているのか、補助事業の一環なのか。この区別がつくと、ベンダーの体力と製品の成熟度がかなり正確に見えます。
my-best.ai 編集部
出典:36Kr「エンボディッドAIの資金調達は冷え込みか——8月は争奪戦、10月はFAまで上場繰り延べを口に」(寄稿:財能圏、2026年10月20日)/IT Juzi、The Information、ロイターの報道による
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