韓国のデータセンター企業Eliceは、コスダック上場初日の取引で一時33%下落し、61,000ウォンをつけました。公開価格はレンジ上限の90,500ウォン、調達額は2,010億ウォン(約1.51億ドル)。個人投資家の申し込みは400倍を超え、10.3兆ウォンが集まっていました。それでも、取引開始から30分で3,000億ウォン相当の時価総額が消えています。

何が起きたのか
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 公開価格 | 90,500ウォン(レンジ上限) |
| 調達額 | 2,010億ウォン(約1.51億ドル) |
| 上場時価総額 | 1兆ウォン超 |
| 個人の申込倍率 | 400倍超(申込資金10.3兆ウォン) |
| 初日の安値 | 61,000ウォン(−33%) |
| 初日の値幅下限 | 54,300ウォン(公開価格の60%) |
韓国のIPOでは、初日の株価は公開価格の60〜400%の範囲でしか動けません。安値の61,000ウォンは、下限まで13%の位置でした。
黒字でも買われなかった
同社は2026年上半期に売上344億ウォン(前年同期比2倍)、営業利益103億ウォン、EBITDAは232億ウォン(11倍超)を計上しています。アナリストは2026年通期で売上83%増、営業利益率33%程度を予想しています。
赤字の成長企業が売られるのは珍しくありません。黒字で、EBITDAが伸びている企業が初日に3割下落した点が、この案件の特異さです。理由は会社の損益ではなく、業界の資金調達環境にあります。
投資家の見方は、現金の流れと資本構成に向いています。利益が伸びても、設備のための借入とリースが重なれば返済が先に来ます。
「新興クラウド」4週間の事故簿
9月22日、ソフトバンク傘下のSB Energyが、大型データセンター向けのIPOを延期しました。10月8日、NVIDIAが出資するオーストラリアのFirmusは、公開価格を25%下げたうえで上場を取り下げています。8月のプライベート評価額の約3倍にあたる437億豪ドルを求めていました。
10月14日、ブラックストーン傘下のAirTrunkは、分配率を6%に上げても15億ドルのシンガポールREITを2027年まで延期しました。マイクロソフトはNscaleとの英国プロジェクトから撤退し、二次市場の投資家は300億ドルの評価額を半減するよう求めました。
上場済みのCoreWeaveは、5月の高値から株価が半減し、社債は不良債権級に落ちました。クレジット・デフォルト・スワップが示す5年以内のデフォルト確率は約63%です。
モルガン・スタンレーは最新のAI設備投資調査で、ハイパースケーラーと新興クラウドのフリーキャッシュフローの不足額が2027年に最も厳しくなり、リース負債の返済を含めると6,000億ドルに迫ると試算しています。設備投資の請求額が最も大きい年と、資金の穴が最も深い年が一致する。このタイミングの悪さが、株式市場の警戒につながっています。
日本のデータセンター投資に置き換えると
日本でもGPUクラウドとデータセンターの投資が続いています。資金の出所は銀行借入とリースが中心で、米国のように社債とREITに依存していません。その分、金利上昇の影響は遅れて効きます。
点検すべき指標は3つです。EBITDAマージンではなく、金利控除後のフリーキャッシュフロー。契約残高の平均残存期間。そして顧客集中度。この3つが弱いまま設備を積むと、調達環境が変わった瞬間に詰まります。液冷を前提にした高密度ラックは電力の引き込みも大きく、受電の枠が資金より先にボトルネックになる案件も出てきました。
よくある質問
Q. 黒字なのに、なぜ初日に下がったのですか。
A. 公開価格がレンジ上限に設定され、初日に買い上がる余力がなかったためです。加えて同業の上場延期や株価下落が続き、投資家が同じセクターを避けました。
Q. 韓国市場だけの問題ですか。
A. コスダックの大型案件という事情はありますが、背景は世界共通です。AIインフラへの資金供給が、株式市場と債券市場の両方から細りつつあります。
Q. 日本企業は何を見るべきですか。
A. 調達条件です。借入金利、リース期間、契約の残存年数。設備の規模ではなく、返済計画の頑健さが選別の軸になります。
編集部の見解
AIインフラの需要そのものを疑う投資家は、もう多くありません。問題は支払いの順番です。設備を作る金利と、顧客から入る利用料のタイミングがずれる。このずれを吸収できるのは、長期の契約か、低利の資金だけです。
日本企業がデータセンター事業に参入するなら、最初に決めるのは設備の仕様ではなく、契約の長さと顧客の分散です。ここを飛ばして規模を追うと、Eliceと同じ場所に立つことになります。
my-best.ai 編集部
出典:36Kr「AIの“新たな地雷”が炸裂?——今回は韓国で」(寄稿:Cailian Press、2026年10月20日)
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