中国の調査会社QuestMobileが2026年第3四半期のAIアプリ市場報告を公開しました。2026年9月時点でAIネイティブアプリの月間アクティブユーザーは5.46億人、前年同月比+82.1%。1人あたり月88.2回・173.5分使われています。同時に、生活向けと業務向けが別々の道に分かれ、「3つの入口」に収束していく構図が見えてきました。

全体の数字を先に置く
| 区分 | 2026年9月の規模 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| AI総合アシスタント | 11.57億人 | +44.0% |
| AI生活アシスタント | 3.47億人 | +55.0% |
| AI办公(業務)月間アクティブ | 1.42億人 | +50.6% |
| AIネイティブアプリ | 5.46億人 | +82.1% |
| 端末メーカー系AIアシスタント | 7.83億人 | +16.9% |
| PCクライアント | 0.26億人 | +82.3% |
| AIプラグイン形態 | 6.39億人 | — |
個別では、豆包4.19億人、千問1.58億人、DeepSeek1.23億人。業務系ではWorkBuddyが3,235.3万人、百度搭子977万人、千問办公790.5万人という並びです。日本でいえば人口の数倍が、ひとつのアプリ群で動いている計算になります。
「3つの入口」への収束
これまで各社はあらゆる入口を試していましたが、Q3は役割がはっきり分かれました。
① 曖昧な欲求を拾うAIネイティブアプリ
何が欲しいか決まっていない段階の依頼を拾う層です。月間88.2回、173.5分という利用実態は、検索やSNSに近い使われ方を示します。
② 決済・人間関係を持つ巨大アプリのAI機能
支付宝は公共料金の支払いや移動、資産管理の入口としてAIを呼び出します。微信は社交とミニプログラムの手続きをAIで段取りします。決済と関係の鎖を持っている側が、明確な用事を取る構図です。
③ 端末メーカーの「無意識の発火」
スマートフォンのOS側から、ユーザーが呼び出さなくても提案を出す層です。OPPOの小布建議は月間1.15億人で前年比+139.9%、1人あたり利用時間は+185.0%増えました。vivoの小V建議は0.62億人、+33.9%です。「自分から呼び出す」という手間を消した点が効いています。
業務用途だけが別の曲線を描いている
生活アシスタントが「サービスの履行」へ向かう一方、業務アシスタントは「全シーンへの埋め込み」へ進みました。特徴的なのが办公エージェントの伸びです。AIネイティブアプリ経由が+518.4%、PCクライアント経由が+512.2%と、ほぼ同じ傾きで伸びています。スマートフォンとPCの両方で同じ業務を続けられることが前提になった、ということです。
報告書は業務用途の難所を「接続」と表現しています。日常業務はコンテンツ、コミュニケーション、システム、組織、外部の5要素に分解でき、それが4つの場面に組み合わさっています。AIの価値は、散らばった情報をつないで、場面ごとに組み直せるところにあります。接続する要素が多く、範囲が大きいほど、乗り換えコストが上がります。現状の主流はまだ単発の文章生成で、複数領域をつなぐ段階には入っていません。
課金は「全面無料」から「階層化」へ
中国の業務AIは、無料版で慣らし、個人向けの入口で課金し、ヘビー層には専門ツールを置き換える価格帯を出し、企業には組織契約と私有化を売る、という4層に分かれつつあります。豆包と千問の有料版は、投入後も利用者数が落ちずに伸びており、無料での集客と有料での収益化が両立することを示しています。2026年9月30日時点の日間アクティブは豆包1.81億人、千問0.29億人です。
よくある質問
Q. 「3つの入口」は日本にも当てはまりますか。
A. 当てはまる部分とそうでない部分があります。決済アプリ経由のAIは中国特有の厚みがありますが、OSレベルの提案とPCクライアントの伸びは日本でも同じ方向です。
Q. 業務AIを定着させる鍵は何ですか。
A. 接続点の数です。議事録、日程、タスク、社内文書のどこまでを同じ文脈で扱えるかで、継続率が変わります。単機能の生成ツールは、最初の1か月で使われなくなりがちです。
編集部の見解
この報告書で実務に効くのは、利用回数より「接続の深さ」を指標にしている点です。日本の企業がAIツールを入れるとき、まだ「何人に配ったか」で効果を測る場面が少なくありません。しかし中国のデータが示しているのは、配布数ではなく、業務のどの要素をつないだかで定着率が決まるという順序です。
導入検討の場では、「議事録を要約できる」ではなく「会議からタスク登録までが同じ画面で終わる」といった粒度で比較するほうが、判断を誤りません。派手な数字は参考程度に、自社の業務要素を5つ書き出して、いくつつなげるかを数える。地味ですが、これがいちばん予測精度の高い見方だと考えています。
my-best.ai 編集部
出典:36Kr「QuestMobile 2026年第3四半期AIアプリ市場レポート」(寄稿:QuestMobile、2026年10月20日)
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