Anthropicは、Rust開発者が一人もいない状態からClaudeに実装を担わせ、Messages APIをPythonからRustへ移植した。Katelyn Lesse氏の説明によれば、関連サービスのCPU消費は約40〜50%減、初トークン遅延は10〜20%改善。人間は設計・計画・検証を握る分業の実例として価値が高い。

移行の進め方、検証が本体だった
発端はCPU資源の逼迫である。マルチリージョン化を終えてもPython単体の効率が低く、今年早くに容量が足かせになると判断した同社は、言語交代という大胆な一手を選んだ。従来なら人材を補充して数年がかりで部分移植する場面で、Claudeがコードを書き、人間が次の3点を担った。
| 役割 | 担当内容 |
|---|---|
| Claude | 実装、設計議論の相手、学習支援 |
| 人間(計画) | システム設計、移行方針、機能追加の追跡 |
| 人間(検証) | Shadow Trafficで新旧出力を照合し段階切替 |
要点は「翻訳」でないことだ。移行中も他チームは旧APIへ機能追加を続けるため、静的解析でRust側の対応実装を漏らさず追跡した。新しい機能を盛り込む誘惑は意図的に退けられ、同氏はこれを移植と呼ぶ。出来上がった新系に影のトラフィックを流し、出力の一致を確認してから本流量を段階的に振り替えた。過去の自分なら許さない進め方だったと本人は述べている。
エージェント時代の四つの工程問題
10月26日の長文「The new set of problems for engineers to solve」で同氏は、数万のエージェントが動く環境の問題群を整理した。基盤面では、独立状態を持つエージェントをKubernetesでどう効率的に載せるか、起動速度と隔離と資源コストの均衡をどう取るか。
認可面では、ユーザーの代理(OBO)で長期稼働するエージェントが子エージェントへ権限をどう継承させるか、超過操作の際に人間の再確認をどこで要求するか。安全面では、信頼できないコードを動かす実行環境の強化、被攻破時に被害が広がる範囲(Blast Radius)の制御。監視面では、OpenTelemetryによる分散トレースの改ざん耐性と、外部から全体を止める緊急停止機構が挙げられた。
「脳と手」を分けるアーキテクチャ
Claude Managed Agentsの設計は、モデル呼び出しと状態保持のハーネス(脳)を信頼基盤に置き、コード実行のサンドボックス(手)を分離する。出発点は遅延と信頼性だったが、安全性こそ最大の利点だと後から判明した経緯を同氏は明かす。
資格情報は完全に独立した保管庫へ置かれ、エージェントには常にプレースホルダーだけが見える。リクエストが実行環境を出る瞬間に代理が本物の認証を注入するため、エージェントと本物の鍵が同じ環境に居合わせない。出站ネットワークは許可リストで絞られ、設計と設定の2層でデフォルトを安全側へ倒す。
同氏はまた、評価の不足が最もよくある失敗だと指摘し、まず簡単なテストでも作り始めるべきだと助言する。コード品質については、行単位の審査より全体計画と設計の正しさ、そして検証機構の充実で品質を担保する方針を示した。
よくある質問
Q. 今はRust人材は確保できたのか。
チームメンバーの多くが自分をRustエンジニアと見なすまで学習が進み、経験の深い数名も中途採用したという。AIに書かせた大量のコードを読む過程そのものが育成になった点は、人材戦略としても示唆的である。
Q. 同じ手法は中小の開発組織でも使えるのか。
発想は使える。要点は言語交代ではなく、人間が設計と検証を握り、AIに実装を担わせ、新旧の出力照合で安全を証明する進め方にある。影のトラフィック比較はツールさえ揃えば中規模でも再現可能である。
編集部の見解
CPU 40〜50%減という数字以上に、検証に 工程を注いだ語り口が信頼できる。AIに書かせて終わり、ではない組織だけが大胆な移植を生き残れる、という好例である。日本の現場では「AIコードは読めば安心」という誤った運用が増えがちだが、この事例が示すのは読みの代わりに照合機構を築くこと。差分検証の仕組みづくりを来年の改善テーマに置く価値がある。
my-best.ai 編集部
出典:36Kr「AnthropicチームはRust経験ゼロからClaudeで核心APIを移植、CPU 40%減・遅延20%減」(寄稿:InfoQ、2026年10月29日)
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