同じ相手と何度もやり取りするAIほど、前に話したことを忘れます。忘れるたびに前提を説明し直すのは、こちら側の手間です。DeepLearning.AI の講座では、エージェントの記憶を、事実、経験、手順の3種類に分けて扱っています。分けると、どこに何を覚えさせ、いつ更新するかが決まります。

手順1:覚えさせたいものを3種類に分ける
事実は、相手の名前や好みなど、変わっても記録できる情報です。経験は、過去のやり取りの例で、判断の基準になります。手順は、エージェントが従う指示そのものです。講座は、この3つを意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶として整理しています。分けずに1つの履歴へ流し込むと、どれを消してよいか分からなくなります。
手順2:事実の置き場所を決める
事実は、会話の外に保存し、必要なときに検索して使います。講座では、記憶の置き場所に事実を足し、次のやり取りで検索する形を扱っています。会話の履歴に埋め込むだけだと、履歴が切れた時点で消えます。検索の対象にするため、1件を短い文で書きます。長い文章にすると、必要な1行を探しにくくなります。
手順3:経験を例として使う
過去のやり取りのうち、判断が分かれた場面を例として残します。講座では、振り分けの段階に少数の例として組み込む形が扱われています。例が多いほど良いとは限らず、判断が揺れた場面を選ぶのが要点です。うまくいった例より、直した例のほうが役に立ちます。
手順4:手順は指示文として持ち、反応で直す
エージェントが従う手順は、システム側の指示として持ちます。利用者からの指摘をもとに、この指示を書き換えて育てます。事実や例と違って、手順は人が読んで直せる形にしておくと、挙動の変更が説明できます。指示の置き方はコンテキストウィンドウの考え方と関係します。入る量には限りがあるため、優先順位を決めます。
手順5:覚える契機を2つに分ける
会話の途中で覚えるか、やり取りが終わってからまとめて覚えるかです。講座は、この2つの機会を分けて扱っています。途中で覚えると即座に反映されますが、誤りも即座に定着します。終わってからまとめるほうが安全で、反映は次回になります。用途で使い分け、迷ったら後者にします。
FAQ
Q. 記憶を持たせると、個人情報の扱いはどうなりますか?
A. 覚える項目を決める段階で、保存してよい情報を絞ります。講座も、記憶の置き場所に入れる前に、何を残すかを選ぶ形です。消す手順も同時に決めておきます。
Q. 記憶が増えると精度は下がりますか?
A. 古い記憶が残ると、いまの状況と食い違う答えを返すことがあります。追加と同じ重さで、更新と削除の手順を決めておく必要があります。
出典
出典:DeepLearning.AI「LangGraph で作るエージェントの長期記憶」(原題 Long-Term Agentic Memory With LangGraph、Harrison Chase、2026年7月17日更新、2026年10月27日参照)
あわせて使いたいツール
本記事の手順を実際に回すときに、候補になるツールを挙げます。いずれも無料から試せる範囲があり、料金や機能は各サービスの公式情報で確認してください。
関連ガイド
同じ時期に公開した実務ガイドと、用語の定義ページです。手順の前提が分からない場合は、用語ページから確認してください。コピーして使える依頼文が欲しいときは、プロンプト集も参照してください。
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- レビュー一覧(使った記録を読む)
編集部の見解
3つに分ける効きどころは、消してよいものと消してはいけないものが区別できることです。事実は古くなったら直し、経験は例が増えすぎたら削り、手順は人が読んで直す。同じ「記憶」でも扱いが違います。うちでは、経験を溜めすぎて判断が鈍ったことがあり、例を絞ったほうが安定しました。覚える仕組みより、忘れる仕組みを先に決めるほうが、結果的に長く使えます。
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