AIに指示するだけでアプリができる。その触れ込みどおり、アプリの数はこの1年で急増しました。ところが米NBER(全米経済研究所)がGitHubの開発者50万人以上を対象に行った調査では、書かれるコードの量が最大約240%増えたのに対し、実際に公開されたリリースは約30%しか増えていません。作るコストは下がったのに、使われるアプリは増えていない。ここが現在地です。

制作の民主化は、本当に起きている
Lovableは世界で最も速く成長しているVibe Codingプラットフォームで、1万4,300人を超える利用者に調査をしています。回答者の80%は非技術職。54.6%が「事業を作っている最中」と答え、24.6%が副業として取り組み、60.5%はまだ収益がありませんが収益化を計画しています。
用途はもともと素朴なものです。広告のうるさい家計簿アプリが嫌で自分専用のものを作る、親のために病院の予約手続きを簡単にする画面を作る、ゲームのModを作る。この範囲なら、AIは確かに「技術の壁」を取り払いました。問題は、その壁が製品づくりでいちばん低い壁だったという点です。
数字が示す「コードは増えたが、製品は増えない」
NBERの研究は、コード補完だけの世代から、プロジェクト全体を自律的に書き換えるエージェント世代まで、複数のAIツールをまたいで効果を測っています。
| AIの能力段階 | コード量の増加 | 実際の成果物 |
|---|---|---|
| 数行を補完する世代 | 約+30% | — |
| タスク単位で修正する世代 | 約+180% | — |
| 自律的に連続作業するエージェント | 最大約+240% | プロジェクト総数 約+80%/公開リリース 約+30% |
| App Store の月間新規公開数 | 2025年初〜2026年4月で約2倍 | 公開後3か月の総利用量は横ばい〜減少 |
アプリストアの棚は確かに埋まりました。しかし新しく並んだアプリの多くは、評価10件・ダウンロード100件という最初の関門すら越えられていません。供給が増えただけで、需要が同じだけ増えたわけではない、という当たり前のことが数字に出ています。
成功事例の「見えていない部分」
SNSで流れてくるのは、14日で作り、6週間で年換算20万ドルの売上、数か月で100万ドルという話です。たとえばクリエイター向けのAI投稿支援ツール「Stanley」は、創業者2人が約14日で初期版を作り、数か月で年換算100万ドルを超え、今年の夏には会社全体で年換算4,100万ドルに達したとされます。
ただしStanを運営するStanは、もともとクリエイターの収益化支援を本業にしていて、顧客リストと配信チャネルを持っていました。創業者は開発前から見込み客に企画を持ち込み、「これは役に立つか」「出したら課金するか」を繰り返し確認しています。開発の過程そのものを公開して、テスト利用者を集めながら作っていました。14日という数字は、営業と集客がすでに終わっていた状態での14日です。
AIは「作る」を担うが、「定義する」は担えない
中国のある開発チームは、微信読書のハイライトを管理するツール「Readmate」をAIで作りました。最初の版はすぐに「使える」水準に達しています。そこで見えたのは、AIに判断力がないという点でした。
十数文字の短い引用と、二三百字の長い引用では、あるべき見せ方が違います。短ければ目立たせ、長ければ読みやすく組む。フォントを変え、和文と欧文が混ざり、画面幅が変われば、同じ処理でも印象は崩れます。「見栄え」と「読むリズム」のどちらを優先するかは、AIが答える問題ではありません。結局、AIが短縮した時間は、AIが苦手な部分を人が詰める時間に置き換わります。
よくある質問
Q. AIで作れば開発コストはどのくらい下がりますか。
A. 実装の工数は大きく下がりますが、公開後の集客・課金・改善のコストは変わりません。中国のショートドラマ制作では、実写で約30万元・1か月かかっていた作品が、AI制作で1〜2万元・10人・2週間になったという例が紹介されています。それでも残るのは「誰に見せるか」の設計です。
Q. 個人開発でも勝ち目はありますか。
A. 汎用ツールで正面から戦うより、自分が当事者になれる狭い領域のほうが現実的です。調査でも、収益化できている人の多くは、すでにその領域のコミュニティや顧客接点を持っていました。
編集部の見解
この記事でいちばん重要な数字は、コード量+240%でも公開リリースは+30%という落差です。日本の開発現場にも同じ構図があります。AIで作れるものが増えるほど、「作らない理由」を探すコストのほうが高くなり、企画が通ってしまう。結果として、社内に誰も使わないツールが増えていきます。
対策は地味です。実装に入る前に、使う相手を3人決めて、その3人に触ってもらう日を先にカレンダーへ入れる。AIで作る前提なら、この順番を守るほうが成果は安定します。制作コストが下がったぶん、判断の質がそのまま結果に出るようになった、というのが率直なところです。
my-best.ai 編集部
出典:36Kr「AIだと一目で分かるアプリに、いったい誰がお金を払うのか」(寄稿:Guokr、2026年10月20日)/Lovable利用者調査、米NBER研究の引用による
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