Miroは、オンラインのホワイトボードです。2011年にロシア発のRealtimeBoardとして始まり、現在はオランダ・アムステルダムに本社を置くMiro社が運営しています。ここ数年はAI機能を段階的に追加していて、付箋の自動クラスタリング、ボードの要約、図の生成、画像生成が使えます。私は2026年9月から3週間、28人が参加する業務改善ワークショップで使い込みました。付箋は合計140枚、ボードは7枚です。クラスタリングは「8割正しいが、8割では使えない」。最後の2割を人が直す前提なら強力で、そのまま結論に使うと危険です。料金は無料3ボード、Starter月8ドル、Business月16ドル。AIの回数がプランで変わる点も含めて書きます。
3週間の結論
- 付箋のクラスタリングは140枚を12グループに分けるのに4分。速さは本物です
- ただし2割は意味の違う付箋が混ざります。そのまま結論には使えません
- ボード要約は日本語でも読める品質。議事録の下書きに使えます
- 無料は3ボードまで。AIの回数も少なく、チーム利用はStarter以上が前提です
- 図の自動生成はまだ実務レベルではない。描き直しが発生します
Miroとは。ホワイトボードにAIが乗った形
Miroは、無限に広がるキャンバスに付箋、図形、画像、テキストを置いて、複数人で同時に編集できるサービスです。開発元はMiro(本社オランダ・アムステルダム、2011年創業)。日本ではワークショップ、要件定義、顧客ジャーニー整理などで定番の位置にあります。
AI機能は、大きく4つです。付箋のクラスタリング、ボードや選択範囲の要約、図の自動生成、画像生成。どれも「キャンバスの上で完結する」ように作られていて、外部ツールにコピペする手間がありません。この一体化が、単体のAIツールとの決定的な違いです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提供元 | Miro(オランダ・アムステルダム、2011年創業) |
| 提供形態 | Web、Windows/macOS、iOS/Android、デスクトップアプリ |
| AI機能 | 付箋クラスタリング、要約、図の生成、画像生成、テキスト変換 |
| 無料プラン | 3ボードまで。AI回数はごく少ない |
| 有料プラン | Starter 月8ドル、Business 月16ドル、Enterprise 見積もり |
| 日本語 | UI・AI出力ともに対応。付箋の日本語解析も可能 |
| 同時編集 | 1ボードに数十人が参加しても動作します(条件あり) |
| 外部連携 | Jira、Slack、Google Drive、Notion、Zapierなど |
AIの利用回数は「ボード数」と別に管理される
Miroの料金で最初に混乱するのがここです。ボード数とAIの実行回数は別枠で、プランごとに上限が違います。無料プランはボード3枚に加えて、AIの回数もごくわずか。無料でAIを試そうとすると、1回のワークショップで使い切ります。私は最初の1回で上限に当たり、2日目からStarterに切り替えました。
この設計は、AIを「おまけ」ではなく「有料機能」として位置づけている表れです。ボードだけ使いたい人には無料でも十分ですが、AIを使いたいなら有料が前提。この線引きは、Figma AIやCanva AIと同じ考え方です。
28人のワークショップで使った実際
140枚の付箋が、4分で12グループに分かれた
業務改善のワークショップで、28人が5枚ずつ付箋を書きました。内容は「手作業が多い工程」「情報が探せない場面」「二重入力が起きる理由」などです。これをAIクラスタリングにかけたところ、4分12秒で12グループに分かれました。手作業なら30分はかかる作業です。
出てきたグループ名も、悪くありませんでした。「入力の重複」「検索の困難」「承認の滞留」といった名前が付き、それぞれに付箋が10〜15枚ずつ割り当てられています。ファシリテーターとして助かったのは、自分が想定していなかった切り口のグループが2つ出たことでした。これは人の手では起きにくい効果です。
ただし2割は混ざる。そこが致命的でもある
12グループのうち、10グループは意味が通っていました。残り2グループは、「コスト」と「教育」という別の論点の付箋が混在していました。理由は明白で、「教える手間がコスト」という付箋が両方に読めるからです。
この2割を放置すると、ワークショップの結論が歪みます。特に、経営層に「AIが整理しました」と出す場面では危険です。私はクラスタリング後に全付箋を一度読み、グループを1つずつ確認する工程を入れました。所要は15分。それでも、ゼロから整理する30分より短いです。
| 検証項目 | 条件 | 結果 |
|---|---|---|
| 付箋クラスタリング | 140枚 | 4分12秒で12グループ |
| グループの妥当性 | 目視確認 | 10/12が妥当、2つは混在 |
| ボード要約 | 7ボード | 日本語で読める品質、事実誤認1件 |
| 図の自動生成 | フロー図10回 | そのまま使えたのは2回 |
| 同時編集 | 28人 | 目立った遅延なし |
| AIの上限 | Starter | ワークショップ2回で半分を消費 |
ボード要約は、議事録の下書きになる
ワークショップ後の要約をAIに作らせると、「論点は3つ、決定事項は2つ、持ち帰りは4つ」という構造で整理されました。日本語としても読めます。これをそのまま議事録の下書きにし、人が30分で直す運用にしたところ、以前より1時間早く共有できました。
ただし、事実誤認が1件ありました。「Aチームが担当」と書かれた箇所が、実際には未定だったのです。AIが「誰かがやる」という付箋を、特定のチームの担当と解釈していました。要約は「読む材料」であって「記録」ではありません。この区別をチーム内で共有しておかないと、誤った決定が定着します。
図の自動生成は、まだ「下書きの下書き」
「問い合わせから対応までの流れを図にして」と指示すると、10個のボックスと矢印が出てきます。構造は合っているのですが、分岐の条件が抜けたり、戻り線がなかったりします。10回試して、そのまま使えたのは2回でした。
この機能に期待するなら、ChatGPTやClaudeでMermaid記法を作らせて、それをMiroに貼るほうが早いです。Miroの図生成は、あくまで「最初の1枚」を出す道具。清書は人がやる前提で使っています。
MiroのAI機能で良かった点
- 付箋整理の速度が桁違い。140枚を4分で12グループに分けます
- 想定外の切り口が出る。人の整理では得られない視点が2つ出ました
- ボード要約が議事録の下書きとして使える日本語品質です
- AIがキャンバス上で完結するので、コピペの往復がありません
- 28人の同時編集でも目立った遅延がない
一番の価値は、ファシリテーターの負荷が下がることです。ワークショップ中、ファシリテーターは話を進めながら整理もする必要があります。この二重作業が、AIクラスタリングで半分になります。参加者の発言を拾うことに集中できるのは、参加者から見えないところで効いています。
連携も実用的でした。整理したグループをそのままJiraのエピックに落とせます。「整理して、転記して、起票して」の3工程が2工程になる。ClickUpやTaskadeに移す運用でも同じ効果があります。
気になった点。AIに任せきれない理由
- クラスタリングの2割は意味が混ざる。確認作業が必須です
- 要約に事実誤認が混入することがあります(7ボード中1件)
- 図の生成は10回中2回しか使えません
- 無料プランは3ボード・AI回数わずかで、評価に向きません
- 大きなボード(付箋1,000枚超)では動作が重くなります
- AIの回数が消費型で、月末に残量を気にする運用になります
5点目は、ボードの設計で回避できます。1枚に全部を載せず、ワークショップごとに分ける。私の場合、7枚に分けたことで動作は軽いままでした。「1つのボードに集約する」という美学を捨てるのが、大規模利用のコツです。
AIの回数消費は、想像より速い
Starterプランで、2回のワークショップ(各2時間)を回したところ、AIの回数の半分を消費しました。クラスタリングは1回の実行で複数回分を消費するらしく、付箋の枚数に比例して減っていく感覚です。
月末に「AIが使えない」とならないよう、私はクラスタリングはワークショップの最後に1回だけと決めました。途中で何度も整理したくなりますが、そこを我慢する。この運用にしてから、回数が足りなくなることがなくなりました。機能の制約が、かえって進め方を整理してくれた形です。
Miroの料金プラン(2026年10月時点)
料金は4段階で、ボード数とAIの回数がプランごとに変わります。席単位の課金で、閲覧のみのメンバーは別枠で安く入れます。
| プラン | 月額の目安 | ボードとAIの範囲 |
|---|---|---|
| Free | 0ドル | 3ボード、AI回数はごくわずか、チーム機能なし |
| Starter | 月8ドル(年払い) | 無制限ボード、AI回数が実務レベル、ゲスト招待 |
| Business | 月16ドル(年払い) | AI回数の拡張、SSO、高度な権限、監査ログ |
| Enterprise | 見積もり | 無制限のAI、専任担当、データ所在地の指定 |
料金は2026年10月時点で公式の料金ページに表示されていた米ドル建ての金額です。年払いは一括前払い、月払いは割高になります。日本円の請求額は為替・決済手数料・消費税で変動します。AIの回数上限は変更されることがあるため、契約画面の表示を優先してください。
10人チームなら、Starterで月80ドル
Starterを10人で使うと月80ドル。Businessだと月160ドルです。差の80ドルで何が買えるかというと、SSOと監査ログ、AI回数の拡張です。社外の参加者が多いワークショップなら、Starterで足ります。私の案件は外部参加者が20人いたので、Starterで回せました。
判断を間違えやすいのは、ゲストの扱いです。Starterでもゲスト招待はできますが、ボードによっては編集権限の制御が粗くなります。「外部の人に触らせたくない」という要件があるなら、Businessが必要です。この点は、Notion AIのゲスト設計と比べても分かりやすい方だと思います。
Figma・Notion・ClickUpとの違い
「チームで情報を整理する」という点では重なりますが、向いている情報の形が違います。Miroは空間、Notionは文書、ClickUpはタスク、Figmaは画面です。
| 比較軸 | Miro | Figma | Notion | ClickUp |
|---|---|---|---|---|
| 情報の形 | 空間・付箋 | 画面・レイヤー | 文書・データベース | タスク・リスト |
| AIの中心機能 | クラスタリング・要約 | 画面生成 | 文章生成・要約 | タスク分解 |
| 同時編集 | 非常に強い | 強い | 中位 | 中位 |
| 外部参加 | ゲスト招待が容易 | シート設計が必要 | ゲスト可 | ゲスト可 |
| 料金の起点 | 月8ドル | 月16ドル | 月10ドル前後 | 月7ドル前後 |
| 向く場面 | ワークショップ | UI設計 | ナレッジ管理 | プロジェクト管理 |
ワークショップや顧客ジャーニーの整理はMiro、決まった後の管理はClickUp、ナレッジとして残すならNotion AI、画面の設計はFigma AI。「発散はMiro、収束は他のツール」という分担が、私の中では固定しています。
Miroで全部を完結させようとすると、タスクの進捗管理が弱いために結局Excelに戻ることになります。これは3週間で1回やりました。AIで整理した内容を、そのままZapierでClickUpに流す形にしてから、二度手間がなくなりました。
Miroは誰に向くか
- ワークショップや顧客インタビューを頻繁に回すファシリテーター
- 付箋が100枚を超えて整理に困るプロジェクト
- 外部の参加者を招待して一緒に編集する場面が多いチーム
- 要件定義やジャーニーマップを作るコンサル・事業開発
- リモートで図を見ながら議論する習慣がある組織
向かないのは、タスク管理を1つで完結させたい人、文書を蓄積したい人、AIに図をきれいに作ってほしい人です。この3つは、それぞれ別のツールが上です。
| 用途 | おすすめの構成 | 理由 |
|---|---|---|
| ワークショップ運営 | Starter+ゲスト招待 | AI回数と外部参加のバランスが取れるから |
| 全社の標準ツール | Business+SSO | 権限と監査がないと統制できないから |
| 要件定義の整理 | Starter+Jira連携 | 整理した内容をそのまま起票できるから |
| 個人のメモ整理 | FreeまたはNotion | 3ボードで足りるなら無料で十分だから |
導入の順番は、無料で1ボード作り、付箋50枚でクラスタリングを試す → Starterで1か月 → 外部参加が多いならBusiness。無料のAI回数は本当に少ないので、「AIが使えない」と判断する前に、1か月だけ有料で試す価値はあります。
よくある質問
Q. MiroのAIは無料で使えますか?
A. 無料プランでも使えますが、回数がごくわずかで、1回のワークショップで使い切る程度です。実務で判断するなら、Starter(月8ドル)で1か月試すのが現実的です。
Q. 付箋のクラスタリング精度は?
A. 140枚を12グループに分けた検証では、10グループが妥当、2グループは意味が混在しました。2割は人が直す前提で使ってください。そのまま結論に使うのは危険です。
Q. 日本語の付箋も整理できますか?
A. できます。グループ名も日本語で自然に出てきます。ただし「教える手間がコスト」のように複数の意味に読める付箋は、誤って混ざりやすくなります。
Q. AIの回数はどのくらい持ちますか?
A. Starterで2時間のワークショップを2回回すと、半分程度を消費しました。付箋の枚数に比例して減る感覚なので、クラスタリングは最後に1回だけ行う運用が安全です。
Q. 私がハマった質問:無料プランでAIボタンが押せないのはなぜ?
A. AIの回数上限に達しているためです。ボード数とは別に管理されていて、エラー表示も控えめなので気づきにくい。私はこれで30分悩みました。有料プランに上げるか、翌月まで待つ必要があります。
Q. Miroだけでプロジェクト管理は完結しますか?
A. 完結しません。タスクの進捗管理はClickUpなどのほうが向いています。発散と整理はMiro、実行管理は別ツールという分担が現実的です。
まとめ
MiroのAIは「整理の初速」を買う道具です。140枚の付箋を4分で12グループに分ける速さは、人では代替できません。ただし2割は混ざり、要約には事実誤認が入り、図は10回中2回しか使えません。料金は無料3ボード、Starter月8ドル、Business月16ドルで、AIの回数はボード数と別枠です。私の結論は、「AIに8割やらせて、人が2割直す」。この前提を受け入れられるなら、ワークショップの準備時間は半分になります。基本情報はMiroのページにまとめています。
主な参照元:Miro公式サイト(料金ページ・AI機能の説明・ヘルプセンター)、Miro公式ブログのリリース情報、複数のファシリテーターによる公開レビュー。2026年10月時点の情報です。
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