Figma AIは、Figma社がデザインツール本体に組み込んだ生成機能の総称です。文章から画面案を作るFirst Draft、プロンプトから動くプロトタイプを作るFigma Make、レイヤー名の自動整理、背景除去、文言の書き換えと翻訳、FigJamの付箋要約まで含みます。私は2026年9月後半から3週間、受託制作のバナー1点とコーポレートサイトの下層2ページ、それに社内ワークショップのFigJam 1枚で使い込みました。「叩き台が5分で出る」体験は本物ですが、そのまま入稿できる画面はほぼ出てきません。この記事では、どこまで任せてよくて、どこから人が直すべきかを、実際に手を動かした順番で書きます。
先に結論から
- 速いのは「0→1」だけ。白紙から画面案が5分で出るのは本当に便利でした
- 日本語の組版はまだ弱い。行間・禁則・フォントの自動選択で、毎回どこかが崩れます
- Figma Makeの出力は「動くが雑」。提案用のデモには使えて、納品物には使えません
- 料金はStarter無料、Professionalが年払いで月16ドル。AIの回数上限はプランごとに別枠です
- 結論として、時短効果は初回だけ大きく、2本目以降は自分で描いたほうが速いと感じました
Figma AIとは何か。まず課金の境界を押さえる
Figma AIは、2024年6月にベータとして発表され、その後Figma本体の各機能に溶け込む形で提供されてきました。単体のアプリではなく、Figmaの編集画面の中に散らばっている生成機能の集合です。開発元はFigma, Inc.(米国サンフランシスコ)。日本では日本語UIと日本語サポートが用意されています。
ややこしいのは、機能ごとに「何をしてくれるか」がまったく違う点です。画面の叩き台を作るFirst Draft、プロトタイプを生成するFigma Make、既存ファイルの整理を助けるAuto Renameや背景除去、文章を扱うRewrite・Translate、ホワイトボードのFigJam AI。これらをまとめてFigma AIと呼んでいるだけで、得意・不得意の方向がばらばらなんですね。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提供元 | Figma, Inc.(米国) |
| 提供形態 | Web(ブラウザ)、Windows/macOSデスクトップアプリ、iPad |
| 主なAI機能 | First Draft、Figma Make、Auto Rename、背景除去、Rewrite/Translate、FigJam AI |
| 無料プラン | Starter。ファイル3件まで、AI機能は月ごとの回数上限あり |
| 有料プラン | Professional(年払い月16ドル/月払い20ドル)、Organization、Enterprise |
| 課金単位 | 1編集者あたり。閲覧のみのユーザーは無料枠で参加できます |
| 日本語対応 | UI・サポートとも日本語。生成される文言も日本語指定が可能 |
| デザイン資産 | Figmaファイル、ライブラリ、Dev Modeの引き継ぎまで一体 |
無料で試せる範囲は「1ファイル3件」が先に来る
Figma AIを試すとき、最初にぶつかるのはAIの回数制限ではなくファイル数の制限です。Starterプランはファイル3件までなので、LPの表紙・下層・バナーを別ファイルで作ると、その時点で枠が埋まります。私は最初これを知らずに、3日目で新規ファイルが作れなくなりました。1つのファイルにページを分けて入れる運用に変えたら、制限は実質気にならなくなりました。
AIの回数上限はプランごとに別枠で動く
2026年10月時点で、AI機能の利用回数はプランごとの上限として管理されています。Starterは試せる回数が少なく、Professional以上で実務的に使える回数になります。ただし上限に達しても編集自体は止まりません。AIボタンだけが反応しなくなるので、「壊れた」と誤解しやすい。月末に静かに使えなくなる挙動は、最初の1か月だけでも把握しておくべきです。
3週間の実作業で分かったこと
First Draftは「方向性の確認」に強い
コーポレートサイトの採用ページ(下層1枚)で、First Draftに日本語で指示を書いてみました。「30代のエンジニア向け、写真多め、青系、応募ボタンは右上」といった具合です。出てきたのは7案、所要4分50秒。うち2案は、そのまま上司に見せられる水準でした。残り5案は写真の配置が破綻していたり、ボタンの余白が詰まりすぎていたりしましたが、「この方向は違う」を早期に共有できたことに価値がありました。
いっぽう、2本目のバナーでは期待を裏切られました。「楽天市場の商品ページ用、1,200×628、赤と白、セール訴求」と指定したのに、出力は正方形に近い構図で、テキストが右端で切れていました。サイズ指定はフレームを先に作ってから生成するほうが安定します。プロンプトだけで完結させようとすると、この手のズレが起きます。
Figma Makeは「動くデモ」まで。納品には遠い
Figma Makeにプロンプトを渡すと、Reactベースの動くプロトタイプが出てきます。社内のダッシュボード案を作らせたところ、2分40秒でグラフ付きの画面が出ました。ただし数字はハードコードで、フィルタを押しても何も起きません。「こう動くイメージです」を見せる用途なら十分ですが、そのまま実装に渡すとエンジニアが別物を作り直すことになります。
この点はChatGPTやClaudeでコードを書かせるのと構造は同じで、生成物の「見た目の説得力」と「実装の正しさ」は別物です。Figma Makeの価値は、デザインとコードの間を埋めることではなく、会話の速度を上げることにあると理解したほうが正確です。
日本語の組版で、毎回どこかが崩れる
一番がっかりしたのがここです。First Draftが出す日本語の見出しは、行間が詰まり、句読点が行頭に来て、英字と漢字の間隔がばらばらでした。特に「、」が行頭に落ちるのは日本語の組版では避けたいところですが、生成段階では考慮されていません。毎回、行間を1.6〜1.7に直し、禁則処理を確認し、フォントをNoto Sans JPに置き換える作業が発生しました。1画面あたり10〜15分。これを「誤差」と呼ぶか「手間」と呼ぶかで評価が変わります。
欧文だけの案件なら話は別です。英語のLPを1枚作ったときは、行間も字間もほぼそのままで使え、修正は色の調整だけでした。Figma AIの組版品質は、言語によってかなり差があると見てよいです。日本語案件が中心なら、時短分の一部は必ず修正に戻ってきます。
チームで使うと、権限の設計が先に来る
3人で同じファイルに入ったとき、最初に揉めたのは「誰のシートで生成するか」でした。AIが作ったフレームは生成した人の権限に紐づくため、委託先が作った案にこちらが手を入れられない場面が出たんですね。結局、AIで生成するのは社内の編集者だけに限定し、外部には閲覧で渡す運用に変えました。これはツールの機能というより運用の話ですが、大人数で導入するなら最初に決めておかないと、後から直すのが本当に面倒です。
Figma AIの良い点
- 白紙が消える。最初の1案が出るまでの時間が、体感で10分の1になりました
- 既存ファイルの整理が速い。Auto Renameでレイヤー名が一気に揃います
- 背景除去の精度が高く、切り抜き作業を外注していた案件で1時間短縮できました
- Figma Makeのデモが非デザイナーとの会話に効く。言葉より早い合意が取れます
- FigJam AIの要約が地味に優秀で、40枚の付箋が3分で論点5つに整理されました
- デザインシステムと接続しているため、生成物が既存のライブラリを参照してくれます
私が一番助かったのは、実は一番地味なAuto Renameです。引き継いだファイルのレイヤー名が「Frame 427」「Rectangle 118」だらけで、どこに何があるか分からない状態でした。これを一括で意味のある名前に変えてくれるだけで、その後の作業が別物になります。派手な生成機能より、地味な整理機能のほうが毎日効くというのが3週間の感想です。
背景除去も想像より実用的でした。白背景の商品写真ではなく、影の落ちたテーブル上の小物だったのですが、輪郭の破綻が1枚あたり1〜2箇所で済みました。完璧ではありませんが、MidjourneyやLeonardo AIで作った素材を組み込む前の下処理としては十分です。
気になった点。向かない場面もはっきりある
- 日本語の禁則処理と行間は生成時に考慮されず、毎回手直しが要ります
- Figma Makeの出力は状態管理がなく、プロトタイプ以上の用途には使えません
- Starterのファイル3件制限が、試用の最初の壁になります
- AIの回数上限に達するとボタンが無反応になるだけで、理由の説明が出ません
- 生成された画面は余白のリズムが単調で、2案目以降は似通ってきます
5点目は、使えば使うほど気になります。First Draftを10回ほど回すと、出てくるレイアウトの骨格がだいたい同じになってくるんですね。「ヒーロー、3カラムの特徴、証言、CTA」という並びが繰り返される。これは学習元の分布を考えれば当然ですが、差別化したい画面ほどAI案から離れる必要があります。
もう1つ、チームで使うときに困ったのが権限まわりです。AIが生成したフレームは、生成した人のファイルに入ります。委託先のデザイナーが生成した案を、こちらで編集しようとすると、シートの都合で触れないことがありました。外部パートナーと一緒に使う前提なら、最初にファイルの置き場所とシート設計を決めておくべきです。後から直すのは面倒でした。
Figma AIの料金プラン(2026年10月時点)
Figmaの料金は「編集者(フルシート)」単位で数えます。閲覧だけのユーザーは無料のビューアー枠で参加できるため、実際の請求は「触る人」の数で決まると考えてください。
| プラン | 月額の目安 | AIと主な違い |
|---|---|---|
| Starter | 0ドル | ファイル3件、AI機能は試用回数のみ、チームライブラリなし |
| Professional | 年払い月16ドル/月払い20ドル | ファイル無制限、AI回数が実務レベル、共有ライブラリ |
| Organization | 年払い月55ドル/月払い65ドル | デザインシステムの統制、変数、分支店管理、SSO |
| Enterprise | 年払い月90ドル〜(要見積もり) | 監査ログ、SCIM、専任担当、無制限のライブラリ |
| ビューアー | 0ドル | 閲覧・コメントのみ。編集もAI実行もできません |
| Dev Mode | Organization以上、または追加シート | 実装向けのコード表示と注釈。AIとは別枠の課金 |
料金は2026年10月時点で公式の料金ページに表示されていた米ドル建ての金額です。年払いは一括前払い、月払いは割高になります。日本円での請求額は為替と消費税で変動し、プラン内容とAIの回数上限は予告なく変わります。契約画面の総額が常に優先されます。
年払いにする前に、AIの回数上限を確認する
Professionalの年払いは月16ドル、月払いは20ドル。差は月4ドル、年48ドルです。この差を回収するのは簡単で、1案件で1時間の時短があれば元が取れます。ただし注意したいのは、年払いにするとAIの回数上限も1年分固定される点です。2026年は上限の設計が何度か変わりました。私は最初の1か月を月払いで様子を見て、「この回数で足りる」と確認してから年払いに切り替えました。
もう1つ見落としやすいのが、Organizationに上げるタイミングです。デザインシステムを複数プロダクトで共有し始めると、Professionalでは変数の管理が足りなくなります。逆に、1人か2人で完結する制作なら、Professionalのままで不自由しません。「AIを使いたい」だけでは上位プランに上げる理由にならないのが、Figmaの料金体系の特徴です。
Canva AI・ChatGPTとの違いはどこにあるか
「AIでデザインを作る」という点では、Figma AIもCanva AIもChatGPTも同じに見えます。しかし出来上がるものの性質が違います。Figmaは編集可能な設計図を返し、Canvaは完成した素材を返し、ChatGPTは指示と素材を返します。
| 比較軸 | Figma AI | Canva AI | ChatGPT |
|---|---|---|---|
| 出力の性質 | 編集可能なフレームとレイヤー | 完成した画像・動画 | 文章・画像・コード |
| 日本語の組版 | 弱い(要手直し) | 比較的安定 | 組版は対象外 |
| デザインシステム | ライブラリと変数に接続 | テンプレート依存 | なし |
| 実装への引き継ぎ | Dev Modeで注釈まで | 書き出しのみ | コードは出るが画面設計は別 |
| 共同編集 | リアルタイム、コメント前提 | 簡易的 | なし |
| 向く場面 | プロダクトUI・LP設計 | SNS素材・簡易動画 | 文案・構成・調査 |
私の運用は、構成と画面設計はFigma AI、写真素材はMidjourneyやKrea、文言はClaude、SNS用の派生画像はCanva AIという分担になりました。どれか1つで完結させようとすると、必ずどこかで品質が落ちます。
特にCanva AIとの違いは誤解されやすいので補足します。Canvaは「テンプレートを選んで中身を差し替える」発想で、完成形が早いかわりに、レイアウトの自由度は低い。Figmaは「構造から作る」発想で、最初の一歩は遅いかわりに、後から何度でも作り直せます。1回きりの投稿画像ならCanva、半年使う画面ならFigmaという基準で、私は分けています。
もう1点、費用の考え方も違います。Figmaは席数で課金されるので、「触る人が増えるほど高くつく」構造です。Canvaは席数を増やしても1人あたりの単価が下がる設計で、大人数の部署に向きます。制作の人数が10人を超えるなら、Figmaのフルシートを全員に配るのは現実的ではありません。閲覧とコメントだけのメンバーは無料枠に回し、編集する2〜3人だけシートを持つ。この形に落ち着くまで、私は2回失敗しました。
Figma AIは誰に向くか。向かない人も書いておく
- プロダクトのUI設計をしていて、叩き台の速度を上げたいデザイナー
- デザイナーが不在で、非デザイナーが画面案を形にする必要があるスタートアップ
- 既存ファイルの整理や命名規則の統一に時間を取られている制作チーム
- デザインシステムを運用していて、生成物を既存資産に寄せたい組織
- エンジニアとの受け渡しで、注釈やコード表示まで一貫させたい開発チーム
逆に、日本語の組版品質を最優先する印刷物や、1枚ごとに緻密なレイアウトを組むエディトリアルデザインには向きません。また、AIに任せたいのが「素材づくり」なら、MidjourneyやLeonardo AIのほうが適しています。Figma AIは素材生成ツールではなく、設計の補助ツールです。
| 用途 | おすすめの構成 | 理由 |
|---|---|---|
| LP・コーポレートサイト | Professional 1〜2シート | AI回数とライブラリ共有のバランスが取れるから |
| プロダクトUI | Organization+Dev Mode | 変数と注釈がないと実装で揉めるから |
| 単発のバナー制作 | StarterまたはCanva AI | ファイル3件で足り、完成品が早いから |
| 大人数の制作体制 | Organization以上+SSO | 権限と監査がないと事故るから |
導入の順番は、Starterで1ファイルに集約して試す → Professionalで1か月回す → チームの運用が固まってからOrganizationが無駄がありません。最初からOrganizationを契約すると、使わない統制機能に月55ドルを払い続けることになります。
よくある質問
Q. Figma AIは無料で使えますか?
A. Starterプランでも一部のAI機能は試せますが、ファイルが3件まで、AIの実行回数にも上限があります。実務で毎日使うならProfessional以上が必要です。まずは1ファイルに画面をまとめて、回数上限に当たるまでの速度を測るのがおすすめです。
Q. 日本語のデザインもきれいに作れますか?
A. 文言の生成は自然ですが、組版は自動では整いません。行間、禁則処理、和欧混植の間隔は手直しが必要で、1画面あたり10〜15分の修正を見込んでください。欧文のみの案件ではこの問題はほぼ起きません。
Q. Figma Makeで作った画面はそのまま公開できますか?
A. 公開できる形にはなりますが、状態管理やデータ接続がなく、実運用には耐えません。社内提案や簡易デモの用途に限定し、実装は別途行う前提で使うのが現実的です。
Q. AIの回数上限に達するとどうなりますか?
A. 編集や保存は続けられますが、AIのボタンが反応しなくなります。エラー文が出ないため故障と誤解しやすいので、月末に近づいたら残り回数を意識しておくか、上位プランへの切り替えを検討してください。
Q. 私がハマった質問:ファイルが3件しか作れないのはなぜ?
A. Starterプランのファイル数制限です。AIの回数制限だと思い込んでいると原因にたどり着けません。私はこれで30分ほど無駄にしました。1ファイル内でページを分ける運用に変えるか、Professionalに上げると解決します。
Q. Canva AIで代用できますか?
A. SNS用の画像や短い動画を作るならCanva AIで足ります。一方、レイヤー構造を保ったまま修正を重ねる、デザインシステムに沿わせる、実装に引き継ぐといった用途ではFigma AIが必要です。目的で分けてください。
まとめ
Figma AIは、デザインの「最初の一歩」を劇的に短くする道具です。白紙から5分で7案が出る体験は、3週間使っても依然として価値があると感じました。ただし、日本語の組版は自動では整わず、Figma Makeの出力はデモ止まり、Starterのファイル3件制限は最初の壁になります。料金はProfessionalが年払いで月16ドル、Organizationが月55ドル。私が出した結論は単純で、「1本目はAI、2本目以降は自分の手」です。AIに方向性を出させ、人が精度を詰める。この分担を最初から決めておけば、時短分がそのまま残ります。基本情報はFigma AIの紹介ページにまとめています。
主な参照元:Figma公式サイト(料金ページ・AI機能の説明)、Figma公式ブログのリリースノート、複数の公開比較記事。料金と機能は2026年10月時点の表示にもとづきます。
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